2倍速で生きる女 NEW

やりたいことが多過ぎて他人の2倍くらいのペースで熟していかないと時間が足りなくなった人。結婚、出産してさらに深刻な事態に。

数秒のコミュニケーション

朝、時間に少し余裕があったので、開店直後の百貨店へ足を踏み入れた。こんな早い時間に百貨店に入るなんて、小学生以来かもしれない。
 
この百貨店は私が幼稚園くらいの頃から、度々買い物に来ているお店だ。学生時代には、地下でアルバイトをしていた事もある。最近は、仕事帰りの閉店間際に化粧品売り場や本屋に寄る程度で、午前中に立ち入る事はほぼない。
 
エスカレーターで上の階へ向かっていると、「おはようございます。ご来店ありがとうございます。」とても上品な声が聞こえてきた。ピシッとしたスーツを着たおじさんが、エスカレーターで上ってくるお客さん一人一人に丁寧なお辞儀をしていた。
 
私の少し前にいた高齢の女性が、「おはようございます」とお辞儀をして返した。
 
私がエスカレーターを降りると、おじさんは言った。「おはようございます。」自分に声をかけられている気がした。だから私は、いつもよりちょっとだけ丁寧に「おはようございます」と挨拶してみた。今日が楽しい日になりそうな気がして、少しだけ気持ちがワクワクした。