2倍速で生きる女 NEW

やりたいことが多過ぎて他人の2倍くらいのペースで熟していかないと時間が足りなくなった人。結婚、出産してさらに深刻な事態に。

稚拙な文章

 

毎年出されるたくさんの夏休みの宿題。その中でも、毎年すぐに終わるものと夏休み終了間際になってやっと取り組み始めるものは、大体決まっていた。漢字ドリルや計算問題など、一問一答形式でサクサク進むものは、大抵すぐに終わる。一方、国語の文章題や美術の宿題などは後に残る。文章を読んだり、絵を描いたりするのが嫌いなわけではなかったが、どうしても時間のかかるものは後回しになる。結局、8月の下旬になって慌てて始めて、やっつけ仕事となってしまう。
 
夏休みの宿題の中でも、特に張り切って取り組んだのは「作文」である。夏休みの宿題に限らず、作文を書くのは得意だった。集中して作文を書いていると、急に周りの音がシャットダウンされ、次々と言葉が浮かんでくる。その感覚が癖になった。
そして、何より作文が好きだった理由は、褒めてもらえるからである。他の地域はどうだったかわからないが、私の育った地域では、市内の各学校から優秀な作文を選んで、文集を作っていた。学校から選ばれた時点で文集に名前が載り、その中でも優秀なものは文章全体が文集に掲載された。
 
有難いことに私も何度か選んで頂いた。と言うのも、こういうことを書けば先生に良いと思ってもらえるという作文を意図的に書いていたからである。記憶では小学校3、4年生の時には、既にこんな作文を書けば、先生に好印象を与えるみたいな事を何となく理解していた様に思う。読書感想文に限っては最初こそ苦手だったが、確か小学校高学年になる頃にはコツを掴んだ。
 
中学2年の時だった。夏休みに書いた読書感想文が文集に載った。それなりに自信があって提出した文だったが、嬉しかった。だが、その文集に同じ中学に通う、男友達の詩が載っていた。その男の子は正直あまり勉強の出来ない部類だったはずなので、驚いて自分のページより先に、その子の詩を見つけて読んだ。衝撃だった。その詩は初恋の自分の気持ちを素直に表現したものだった。
 
急に自分の書いた文章が恥ずかしくなった。結局、その文集は家族の誰にも見せず葬り去った。
 
それ以来、自分の書く文章に自信が持てなくなった。あまり文章を積極的に書かなくなった。だから、私の文章力は中学生レベルで止まったままだ。…なる程、大学で稚拙と言われる訳だ。